恋をしない君へ
気づけば、27歳になっていた。
もう体育館で朝礼をうけることはないのだな、とふと思った。
それに気づいたのは、19歳でも20歳でもなく、高校後卒業11年もたったなんでもない日の通勤電車の中だった。
27歳か。
高校生から大学生1、2年くらいまでは、まじでこの世は私中心に回っていると思ってた。
人気のアイドルはだいたい同じ世代で、好きな女優俳優は3〜4個上くらいで、
毎日の悩みは、学校の人間関係、好きな人のこと、進路。あと家族。
1日は結構長かったし、まっすぐ家に帰りたいと思うこともなかったから、放課後暗くなるまで学校にだらだらと居残り、中身のない話を楽しみ、好きな人に遭遇することを期待し、生きていた。
わたしは好きな人の背中ばかり見ていた。
その人は私に背中ばかり見せていた。
私はその背中に声をかけることはできない人間だった。
アディダスのロゴを見かけては、勝手に頭から足の先まで緊張していただけだった。
うまく話せないまま、私の高校生活は幕を閉じた。
すきなひと。
それからわたしに好きな人はできなかった。
できなかったのか、ならなかったのか、なれなかったのか。
つづく